マグロ最前線 うおまるコラム/TV企画の養殖マグロと天然マグロの食べ比べで養殖マグロに軍配!?

昔、高嶺の花だったトロは、海外での蓄養が成功し流通体制が整い、その結果安価になりました。
しかし数年前から価格が下落し業界も価格破壊が始まりました。その張本人が"養殖・蓄養"です。
今や日本に出回っているマグロの35%を占めています。35%ともなると、知らず知らずのうちに食べたり、天然と思い込んで人もかなり多いと思います。

あるTV番組で、参加者に目隠しをして『天然マグロと養殖マグロどちらがおいしいか』という食べ比べ企画がありましたが、養殖62%、天然38%という結果で養殖がおいしいに軍配が上がりましたが・・・あまり喜ばしい状況でもありません。

参加者のコメントは"養殖"は「脂が乗って、柔らかい」 "天然"は「歯ごたえがある」という回答でした。中には年配の方でおれは「天然しか食べない!」と豪語した方も養殖がおいしい方に軍配を上げ恥ずかしそうにされていたのが印象的でした。

当店のショーケース販売でも同様ですが、"養殖・蓄養"と"天然"のお造りが並んでいた場合、ほとんどのお客様は脂の乗った"養殖・蓄養"を選びかけます。私は「今ホンマグロの天然の生が入荷しております」と、必ず天然の生マグロをお勧めしましが、「私は"養殖・蓄養"は食べないから」と啖呵を切って"天然の生"を購入される方、「この天然の生マグロ脂が乗っていないから"養殖・蓄養"でいいわ」といわれる方、はたまたこちらが何も言わないのに天然の生を選ぶ方、本当に人それぞれで人間ウオッチングをしていたら非常におもしろいです。叱られれそうですが・・・

後日、啖呵を切って天然の生を購入したお客様にお尋ねしたところ、「天然の生って脂が薄いのね」と言われました。私は「これが本当のまぐろの味なんですがね。歯ごたえがあっておいしかったでしょう。」と言いましたが・・・

日本の養殖技術の高さを物語る象徴的な魚が、タイ、ヒラメ、ハマチそしてマグロである。「獲る漁業から作る漁業」を志向した日本の漁業の革新ぶりには目を見張るものがあります。しかし、天然物との品質格差が縮まれば縮まるほど、消費者の天然物信仰も逆に増えていますし、天然マグロの価値も上がっています。私は食べておいしいと思うものがおいしい。それが"養殖・蓄養 "であれ "天然" であれいいと思いますよ。
ただ変な見識やプライドが邪魔するよりは・・・ 

昔に比べると品質のよいマグロも非常に少なくなりましたが、なんとかしてそのおいしさを伝えるのも我々プロフェッショナルの使命であると感じております。

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2002.6.7

 

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