マグロ最前線 うおまるコラム/天然VS蓄養(ミナミマグロ編)

ミナミマグロ・天然

このマグロは名前の通り、南半球に生息しているのでミナミマグロと呼びます。
最初の頃は、赤道近くのインド洋ジャワ沖で漁獲されたので、その由来から今でもインドマグロと呼ばれています。関西ではインドマグロという呼び方がポピュラーですが、正式名はミナミマグロです。

初期(1950年代)頃は、インド洋ジャワ沖で漁獲されていましたが、冷凍技術の革新(1970年前後)つまり−60℃の冷凍庫を搭載した漁船の出現により、漁獲海域が赤道を越えて南半球のニュージーランド・ケープタウン・オーストラリア・タスマニアなどに広がりました。入荷量の90%以上は冷凍で体長は1.3m〜2m、体重は70k〜180kです。生は馴染みが余り無いと思いますが、3〜4年ぐらい前から少量入荷するようになりニュージーランド付近で漁獲されています。

初期頃は、マグロの漁獲は主にアメリカ向けの缶詰用のキハダマグロ、ビンチョウマグロがメインでした。脂のあるミナミマグロは缶詰に向いていないし冷凍技術が進歩していない当時は、−20℃程度の漁船なので、凍結をかけても褐色するため刺身用には無理でした。また魚倉が満杯に近づき、日本に帰港間際に逆に価値のあるキハダ、ビンチョウを確保するためミナミマグロを捨てた漁船もあったそうです。現在とは逆の状況で もったいない話ですね!

このマグロは、高度経済成長と冷凍技術革新に伴い本格的にデビューしたマグロといえそうです。
現在では、『身質も引き締まり味も濃く、シャリ(酢めし)と非常によく合う』ということで本マグロと人気を二分しております。
1尾100万円を越えるマグロも少なくなく、資源的にも非常に良品が少なく、ますます貴重なマグロとなるでしょう。

ミナミマグロ・蓄養

市場では『小インド』とも呼びます。
事の始まりは1991年に日本の海外漁業協力財団にオーストラリアから蓄養の関する調査要請の打診があり、それから以後技術を駆使して現在に至ってます。

当初は苦労の連続で一本釣りをして生け簀に移す時にマグロが弱り、2〜3週間で死んでなかなか事がはかどりません。1993年頃、一本釣りに代わり大きな網で群れを捕獲し、網の中で泳がせたまま生け簀まで運搬する方法が考案されました。またマグロは神経質でストレスに弱いことから1回の捕獲量を100tから50tに減らし、生け簀までの道のり(400km)を2週間かけてゆっくり移動させるように改善しました。その結果、現在では死亡率を3〜5%以下に抑えることが可能になりました。

基地の母体は、南オーストラリア州ポートリンカーン。港から約20km沖合の静かな湾内に、直径40m、水深は最初20mでしたが、台風で海底の砂が巻き上がり70%以上のマグロが死んだり逃げたりした経験から現在は水深80mの生け簀で飼育しています。

毎年の12月〜1月にかけて南オーストラリア沖に回遊してくるマグロを捕獲し、3ヶ月〜8ヶ月(平均6ヶ月)かけて太らせる。生け簀からの水揚げは4〜9月、体長1m、体重20〜60kに成長したものをダイバーが泳いでいるマグロの尻尾を一尾づつ引っ張り失神させ、両エラを抱えて船上に揚げ〆て内臓を取り出し氷蔵もしくは冷凍する。何故尻尾を引っ張っぱるのか、それはマグロは泳ぐために前進運動しかしません。尻尾を持ち、引っ張ることで逆の運動をしたためにびっくりし、失神するのです。1尾ずつ抱えるのはマグロが暴れる事によって引き起こる体温上昇(身質が劣化)を防ぐためである。

エサは脂を増やすためにイワシを与えています。但しイワシ臭を防ぐため、与えるのは出荷の2〜3日前まで、赤身の色を鮮やかにするため時々海老も混ぜます。99%が日本に出荷させ、残り1%もシンガポールやアメリカの日本食レストラン向けです。

現地では「いずれ天然ものの本マグロをしのぐミナミマグロを作って日本に送り出したい」という事です。

天然:ミナミまぐろ生 (ニュージーランド・155k)

少し赤いが、身質はよいです。

蓄養:ミナミまぐろ生(オーストラリア・61k)

蓄養の中ではかなり大きめで、身質はしっかりしております。

天然:ミナミまぐろ/生腹(カミ)

腹(カミ)

ミナミマグロの場合、腹骨が太くて身に深く食い込んでいます。

蓄養:ミナミまぐろ/生腹(カミ)

腹(カミ)

魚体が小さいので、骨の部分は余りわかりませんが、骨の構造は天然と同じです。

天然:ミナミまぐろ/背(真中)

背(真中)

同様に脂の部分と赤身の部分の区別がはっきりとわかります。腹より背の方が、良く見えます。

蓄養:ミナミまぐろ/背(真中)

背(真中)

同様に脂が行き渡っていて脂の部分と赤身の部分の区別がわかりにくいですね。

天然:ミナミまぐろ/腹(シモ)

腹(シモ)

脂の部分と赤身の部分の区別がはっきりとわかります。

蓄養:ミナミまぐろ/腹(シモ)

腹(シモ)

脂が行き渡っていて脂の部分と赤身の部分の区別がわかりにくいですね。

天然:ミナミまぐろ/かまとろ
拡大表示

かまとろ

俗にいわれる”霜降り”の部分です。身が若い分少しスジが硬そうです。

蓄養:ミナミまぐろ/かまとろ
拡大表示

かまとろ

霜降りの部分です。ピンクっぽいですね。色だけで比較するとこちらの方がきれいですよね。

天然:ミナミまぐろ/大とろ
拡大表示

大とろ

同様に身が若い分少しスジが、硬そうです。

蓄養:ミナミまぐろ/大とろ
拡大表示

大とろ

魚体が小さいので食べてもスジは気になりません。色がピンクっぽく色だけで比較するとこちらの方がきれいですよね。

天然:ミナミまぐろ/中とろ
拡大表示

中とろ

トロと赤身のグラデーションがはっきりして、蓄養に比べて脂が白いですね。つまり脂があるということです。

蓄養:ミナミまぐろ/中とろ
拡大表示

中とろ

トロと赤身のグラデーションが全体的に薄いですね。食感は柔らかく、脂はあっさり目。

天然:ミナミまぐろ/赤身
拡大表示

赤身

ミナミマグロ独特の深い赤(言い換えれば黒っぽい赤)が特徴です。薄く切って鮨ネタにすればきれいな色に映えます。食感は“もっちゃり”

蓄養:ミナミまぐろ/赤身
拡大表示

赤身

脂が行き渡っていて全体的に色が薄いですね。 食感は柔らかく、魚の“よこわっぽい”です。


お問い合わせメール魚丸商店

 

『うおまるコラム』インデックスへ

Copyright (C) 2001-2010 UOMAEU SHOUTEN Co.,Ltd. All Rights Reserved.