多くの食肉は熟成することによって肉が柔らかくなり、旨み、香りが加味され、味わい深くなります。
マグロの場合も同意味ですが、すべてのマグロに該当する言葉ではなく、あくまでも天然近海本マグロの身質の抜群に良い=鮮度の良いマグロが一番似合う言葉ではないでしょうか。
たまに冷凍でも熟成なんて使っていますが、冷凍の場合は1〜2日で十分でしょう。それ以上経つとトロの部位なんかは脂が回って生臭さや脂臭さを感じる時がありますから。
熟成は酸素にふれたり、温度変化により早くもなり遅くもなります。我々も寿司屋さんもそうですが、熟成を鈍化させるために氷蔵冷蔵します。あれは温度を低くすることにより熟成を遅らせてマグロを長持ちさせます。
近海本マグロでも中型サイズの定置網で獲れたものは、1日〜2日寝かせば食べ頃ですが、逆に大型サイズの良質なモノは10〜14日間ぐらいは保持できるので、その期間内で色々な味わい方をする。
そこに大型近海本マグロの魅力がありそして重宝され高価で取引されるわけです。
その味わい方ですが熟成、熟成というが、ただ熟成させればいいってものでもないようです。
特に縮れた(若い)赤身は新鮮な香りが漂うし、ズケにすると煮きりをスッと吸って旨い。また熟成が進むと旨みがでてきます。トロの場合は脂でエイジングされ甘味がでてきます。
マグロの旨さって結局、香り、酸味、甘味になります。香りと酸味は新鮮さの証ですが、甘味は熟成にしたがってでてくるものです。
【すきやばし次郎】の著にもありますが、
『味と香りがピークに達するのは、熟成が進んで、はつらつとした身の赤さが少しクスみ加減になる頃で、特に大トロや中トロはそうです。酸化する一歩手前が味わい深いのは牛肉と同じで、食べて旨い味と香りを採るべきか、食欲をそそる色合を採るべか』 この判断が難しい・・・色目と旨みをどう両立させるかが鮨屋のオヤジの腕の見せ所だそうです。